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by eigoyasan

mothball(軍艦を予備役に入れる)

日本のマスコミが平和主義を志向しているのはまことに結構なのだが、軍備とか安全保障の問題について不見識な関係者が多いようだ。わざわざイラクまで自衛隊の取材に行って「この装甲車は頑丈そうです」と伝えてきたのんきなレポーターがいたのには、あきれてしまった。まるで、「この機関銃は弾丸を続けて発射することができます」と伝えているようなものだ。「装甲車」なのだから、頑丈なのは言わずもがなだ。

もっとも、軍事を顧みなくなって久しい戦後の日本人には、言葉だけでなく、その言葉で表されている事物や行為そのものを知らないことがある。mothballという言葉もそのひとつだろう。"USS Iowa has been mothballed."などと書いてあっても、「USSアイオワをモスボールした」と訳したのでは、何のことやらさっぱりわかるまい。

mothballの元々の意味は、かつてトイレでよく見かけたナフタリンでできた防虫剤の玉のこと。転じて、軍艦をいったん退役させて長期保存用の処理を施すことをいう。米国では、たとえば大型戦艦のように、今日では無用の長物になった旧型の軍艦をmothballすることがある。完全にスクラップにするのではなく、いざ有事というときには現役に復帰させるためである。前掲の文は、「米国軍艦アイオワを予備役として長期保存(のための処理を施)した」という意味なのである(戦後の日本にそういう慣行がないせいか、一語でぴったり当てはまる日本語が見当たらない…)。

日本の海上自衛隊は、艦の保有数が法律で制限されているらしく、最新鋭の新造艦ができると旧型艦は退役させてしまうらしい。もったいない話だが、予備役に回すこともできないし、軍事技術が詰まった船を外国に売却することもできないのだろう。平時の軍隊というのも、コストがかかるものだ。

(メルマガ「英語屋さんの作りかた」第18号掲載) ©Yoshifumi Urade 2004
by eigoyasan | 2005-07-31 15:25 | こんな英語、見つけたよ