そのことに私が気付いたのは、たしか会社の現場で仕事をするようになってからだった。「在庫がある」は、The inventory is available.といえばいい(拙著『国際業務のABC』pp.35-36参照)。
「市場に出回っている、販売されている」という意味でも使える。たとえば、Is such an option available?(このようなオプション品は買えますか)という具合に使う。「市販されている」という意味をより明確にしたいならcommercially availableという表現がある。
Are you available tomorrow evening?(明日の夕方は空いている?)というように、人についても使える。応用範囲の広い、実に便利な形容詞である。
これほど便利な単語なのに、学校ではあまりよく習った記憶がない。もちろん、教師は一生懸命に教えていたのに、私が聴いていなかっただけかもしれない。
だが、この言葉を英和辞典で引いてみると、辞書によってはそれほど多くの紙面が割かれていないことに気付く。私のパソコンに入っている辞書でざっと検索してみたところ、この言葉の様々な用例を多数収録している辞書がいくつかある。
そのひとつが、以前から機会を捉えては皆さんにお奨めしている『ビジネス技術実用英語大辞典』(海野文男+海野和子 両氏編、日外アソシエーツ)である。私が愛用しているCD-ROM版のほか、(紙の)書籍版も以前から出ている。
実務で英語を書くなら、普通の英和辞典や英英辞典のほかに、こういった使い出のある単語やその用例が充実している実用的な辞書を備えておくことをお勧めしたい。
(メルマガ「英語屋さんの作りかた」第8号掲載、一部加筆) ©Yoshifumi Urade 2003
たとえば、embryo stem cellという言葉に当たる日本語が、手元の辞書を引いても見つからないとします。この言葉を"embryo stem cell"とくくって「ウェブ全体で検索」すると、その言葉が含まれる英文のウェブサイトがずらずらと表示されてしまいます。
そこで、その言葉を入れたまま、今度は「日本語のページを検索」のラジオボタンをクリックしてからふたたび「Google検索」ボタンを押すと、今度はその言葉が含まれる日本語のウェブページだけが表示されます。それらをざっと見て回ると、「胚性幹細胞」「胚幹細胞」「ES細胞」などの日本語の訳語が見つかります。
もちろん、山とあるウェブサイトは玉石混交ですから、必ずしも適切な訳語でないものを引き当ててしまうこともよくあります。検索結果を一覧して、広く使われている訳語を探し当てましょう。
この方法は、辞書にまだ収録されていないような新しい言葉や特定分野の専門用語の訳語を探すのに便利です。

当家の長老ネコのドラちゃんが、5月10日(火)の夕方、天国に旅立ちました。数えてみたら、以前住んでいた品川区中延の賃貸マンションの近くでうろうろしていた彼に出会ってから(注1)、すでに9年の歳月が流れていました。享年(推定)15歳。
かつてのノラ暮らしがたたったせいか、ドラは数年前からすでに腎臓を患っていました。それでも、食欲がなくなるたびに手を替え品を替えしながら出したキャットフードや刺し身をよく食べながら、亡くなるほんの数日前までは元気に暮らしていました。
しかし、この数ヶ月間でドラの足腰はかなり弱り、身体も細くなっていましたので、私たち夫婦も、「その日」が来るのはそれほど遠くないだろうと覚悟していました。
ドラはその数日前から、いつもは入らない風呂場に入っては、そこにぼうっと座っていました。ベランダに連れて行っても、あれほど好きだった日なたぼっこもしないで、そそくさと帰ってきました。さすがはネコだけあって、自分の命がまもなく尽きることをドラは知っていたのでしょう。
食欲も急に落ちましたが、そこはグルメのドラのこと。いつものネコ缶は食べなくても、大好物のマグロやアジの刺し身はおいしそうに食べてくれました。それも口にしなくなったので、ドラが食べたことのないシャケを家内に焼いてもらうと、それはハグハグと食べてくれました。もうこうなったら、食べてくれるものを食べさせるしかありません。
亡くなる前日にはいよいよ水も飲まなくなったので、これはもういけないと思い、かかりつけの獣医の先生のところに連れていきました。腎臓が悪いネコに特有の症状として、ドラはこれまで、水をよく飲むことで身体のバランスをとってきました。現在の医療では、ネコの腎臓は元に戻せません。水を飲まなくなると、やがて尿毒症に陥り落命することは前から聞いて知っていました。
先生は「ああ、骨と皮だけになっちゃったね。痛くない注射をするからね」と優しくドラに言いながら、私たちにこう説明しました。「ネコが冷たいところに行きたがるのは、もう先が長くないということなんです。心臓の音も元気なころの半分くらいに弱っています。すでにお気づきだとは思いますけど…」
私たちはドラを連れて帰り、住み慣れたこの家から旅立たせてあげることにしました。ただ安らかに逝ってくれることだけを祈っていました。家に帰ったときには与えた砂糖水をぺちゃぺちゃと飲んでいたドラでしたが、その翌朝、1階奥の薄暗い静かな和室に這うように入ると、そのまま畳の上で深い眠りにつきました。
2階で仕事をしていた私は、30分おきにドラの様子を見に行きました。すでに口に水をつけてもなめようともしないドラは、そっとしておいてあげるのがいいでしょうと先生にも言われていたので、ただ見守るしかありませんでした。何度目かに見に行ったとき、ドラがとても幸せそうな笑顔を浮かべていたのが救いでした。その日の夕方、ドラは苦しんだ様子もなく、そのまま静かに息を引き取りました。
ドラの長い体が入るような段ボール箱をようやく見つけた私は、その中に彼の亡骸を横たえました。家内と義母が庭で花を摘んできてくれました。(火葬にするので本当はいけないのですが)そのほかに、若かったころドラが愛用していたプラスチック製のネコジャラシとスティック状の袋に入ったドライフードを2本ずつ入れると、箱のフタを閉じました。
その翌朝。ペットの供養をしてくれるお寺の車がドラを迎えに来てくれました(注2)。宅配便のドライバーのような制服を着たお兄さんが玄関先で「お預かりします」と言ってくれました。でも私は「見送りに行きたいので…」と言って、最後にもう一度ふたを開いてドラにお別れを言ってから、その棺を自分の手で車に運びました。
走り去る車を見送りながら、家内も私も心の中で同じような言葉をつぶやいていました。
「ドラちゃん、またおいで!」
「またどこかで会おうね、ドラちゃん!」
9年前、大きな身体を揺らしながら私たちの家に上がりこんできたドラは、そのときと同じように悠々と旅立っていきました。数え切れないほどの思い出と、心の中にぽっかりと大きく空いた穴を私たちに残して…。
【参考】
(注1) 寄稿「ドラのお仕事」(2000年当時、元気だったころのドラの話)
(注2) ドラが眠る慈恵院(府中本山)のホームページ
現代の大砲はもちろんそんなふうには発射しないが、「発射!」という号令には今でも"Fire!"という英語が使われる。SF映画を見ても、"Phaser, fire!"(フェイザー砲、発射!)などというセリフが聞かれる。フェイザー砲なるものがどういう原理の兵器かは知らないが、まさかタイマツで火はつけまい。
さらに大人になると、今度はfireが「クビにする、解雇する」という少し嫌な意味でも使われることを知る。もともとは口語表現だったらしいが、辞書で「解雇する」と引くと出てくるdismissといった単語よりも見聞きすることが多いようだ。
もっとも、映画やドラマで見かけるように、相手に面と向かって"You're fired!"(おまえはクビだ!)などと怒鳴る上司はほとんどいないらしい。それはそうだろう。常識的にはもっと婉曲な言い方をするはずだ。
直接的な表現で「クビ」「解雇」「人員整理」などというのが忌み嫌われているのか、この国では最近「リストラする」という言葉がその意味でよく使われている。しかし、英語のrestructuringとは「再構築、再構成」の意味であって、restructureされるのはcompany(会社)のようなorganization(組織)、せいぜいjob(仕事)である。「従業員(人)をrestuctureする」という言い方はしない。
(メルマガ「英語屋さんの作りかた」第6号掲載、一部加筆) ©Yoshifumi Urade 2003
これにより、ウェブ検索と同様の機能を使って自分のパソコンの中にあるファイルを検索することができるようになりました。検索結果は、ウェブ検索と同様に瞬時に表示されるので、覚えている断片的な言葉を頼りにその言葉が含まれている資料を探し当てることができて便利です。
現時点ではまだベータ版しか出ていないようですが、これまで使ってみたところでは、トラブルは起きていません。使い方もいたって簡単…というより、通常のウェブ検索と同じウェブページに検索結果が表示されるので、新しいツールを導入したという感覚さえほとんどありません。
難点らしい難点といえば、OSがWindows XPまたはWindows 2000(SP3)以降でなければ使えないこと、それに、インストール直後に自動的に始まるインデックスを作る過程でハードディスクの容量をかなり食ってしまうことくらいでしょうか。(私のパソコンでは、ハードディスクの残り容量が0.3GBくらい減ってしまいました…。あわてて不要なアプリケーションを削除したり、保存していたファイルを別のハードディスク領域に移しました)。
でも、こういう便利なツールって、いちど使い始めるとなかなか手放せないんですよね…。
たとえば、unless ~specified(別に定めのない限り)という定型表現がうろ覚えで、~の部分が思い浮かばないとします。その場合は、"unless * specified"とGoogleに入力します。すると、unless otherwise specifiedという用例がずらずらと出てきて、otherwiseが正解だということがわかります。
ワイルドカード検索はこのほか、略語の一部が何の頭文字がわからない場合とかにも活用できて便利です。
その中で、分刻みで運行予定を守る日本の鉄道システムに対する驚嘆の声もあったようだ。私がときどきインターネットで見ている米国のテレビ局のニュースでも、特派員が"Even subways keep a strict, minute-by-minute schedule."(地下鉄でさえ、厳密な分刻みのスケジュールを守っている)と伝えていた。
もっとも、ときどき都営地下鉄を使っている個人的な経験からいうと、これは少し言いすぎではないかと思う。都営大江戸線が数分遅れることはよくある。都庁前の分岐点の接続も悪く、よく待たされる。通勤していない私でさえそう感じるのだから、毎日乗っている人はもっとそう思っているに違いない。これも、あくせく利益追求に走らない公営交通ならではかもしれない。赤字続きも困るが、利便性よりも安全性を考えると、少しくらい遅れるよりも安全確認を重視してもらったほうがいい。
鉄道会社や路線によっては、伝えられるように文字通り「分刻み」のスケジュールを守っているところもあるだろう。しかし、報道機関がこのように一般化して伝えると、逆に良からぬ誤信を招く危険がある。いわゆる「安全神話」とやらもそうだ。調べて言っているわけではないが、先進国の中で日本だけが抜きん出て公共輸送機関の事故発生率が低いということはおそらくないだろう。
安全面でも利便性でも日本人のやることはことごとく完璧だという過信が、日本企業の油断を招いてきたような気がしてならない。
(メルマガ「英語屋さんの作りかた」第45号掲載) ©Yoshifumi Urade 2005
Googleで最初に表示される「ウェブ検索」では、検索したい「言葉」が出ているウェブサイトを探して回りますが、その右隣にある「イメージ検索」をクリックして検索すると、その言葉に関係のある写真やイラストなどの「画像」を検索することができます。
たとえば、自動車のことをほとんど知らない人が、SUV(Sport Utility Vehicle)という略語の日本語訳を調べるとしましょう。辞書やネット検索で調べると、「スポーツ用多目的車」という日本語が出てきますが、これがどのような車種なのかまだよくわからないとします。
そこで発想を切り替えて、イメージ検索にSUVと入力します。すると、出てくる写真はいずれも日本ではRV(レクリエーショナルビークル)と呼ばれる車だということが見て取れます。
(なお、この場合、その日本語の訳文を読む相手が自動車に詳しい人なら「SUV(スポーツ用多目的車)」と訳しておけば十分でしょうが、そうでない一般の人に読んでもらうものなら、「RV」と訳すか、SUVのまま残しておいて「RV車のこと」と注記しておいたほうが親切かもしれません。)
翻訳の仕事に没頭しているとつい文字情報だけに頼りがちですが、インターネットを一種の図鑑として活用するこの方法、気が向いたときにでも使ってみてはいかがでしょうか。
ご存じかもしれませんが、私が英語の用例検索によく使う方法を書いておきます。
- 単語AとBの間を空白で区切ると、「and検索」になります。この場合、検索されたウェブページのどこかにそれらの語が使われている例を引いてきます。
(検索結果)....A....B....
- A+Bを連語(フレーズ)として検索したい場合は、"A B"と半角の引用符でくくります。
(検索結果)....A+B....
- AとBの間に何でもいいから別の語が挟まれる例を調べるには、"A * B"のようにワイルドカード(*)を入れます。
(検索結果)....A * B.... (* は任意の語)
こうやって検索した結果として用例がたくさん出てくれば、その英語が実際に通用していることがわかります。
なお、検索エンジンの使い方については、翻訳者の海野さん(『ビジネス技術実用英語大辞典』の編纂者)が開設されているウェブサイト"CyberScope"に詳しく解説されていますので、よろしければご参照ください。
もちろん、Googleのウェブサイトを開けば検索できるのですが、 Googleツールバーをブラウザの上部につねに表示しておくことで、どこからでもすばやく言葉を探すことができるようになりました。
このツールバーにはいろいろな機能がついているようですが、全部を表示させるとツールバーまわりがごちゃごちゃして使いにくいので、「オプション」から必要な機能ボタンだけ表示させて使っています。翻訳の仕事で使う私のブラウザで表示させている機能は次のとおりです。
- 「サイト検索」ボタン: 同じサイト内だけで検索できます。たとえば、ある会社で使われている名称や用語に絞って検索するときに威力を発揮します。
- 「上へ」ボタン: これを押すとひとつ上の階層に上がれます。ウェブサイト内のリンク構造がよくわからない場合、これでいちばん上まで行ったほうが早く探せることがあります。
- 「ハイライト」ボタン: 検索しているキーワードをマーカー(黄、青、赤など)でハイライト(強調)表示してくれます。
- 「キーワード検索」ボタン: 検索しているキーワードごとにウェブサイトを検索して回れます。いちいちブラウザの「検索」機能を使わなくてもいいので能率的。
- ポップアップブロッカー: ウェブサイトを開くたびに出てくるうるさいポップアップ広告を阻止してくれます。(なお、これと同様の機能がWindows XPの最近のサービスパックでもつけられたようです)。
検索エンジンはGoogle以外にもいろいろとありますが、翻訳の用語調べにはGoogleがいちばん便利かと思います。私にとってはもはや手放せないツールになっています。